太陽地球系物理学分野のメタデータスキーマ(SPASE)をJPCOARスキーマへマッピングした事例
- 分野別研究データ
-
太陽地球系物理学分野のメタデータスキーマ(SPASE)をJPCOARスキーマへマッピングした事例
目次
公開元URL
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/search?page=1&size=20&sort=controlnumber&search_type=2&q=1668993801802
実施機関
名古屋大学、九州大学、名古屋市立大学
事例に関わった部署
太陽地球系物理学分野の研究者(名古屋大学宇宙地球環境研究所、九州大学国際宇宙惑星環境研究センター、名古屋市立大学データサイエンス学部) 図書館職員(名古屋大学附属図書館、九州大学附属図書館) 情報科学エンジニア(情報試作室) 上記の3者の協同が不可欠であった。
対象
太陽地球系物理学分野におけるSPASE 2.4.0のメタデータが付与されている研究データ (2024年9月現在 464件)
本事例の目的
太陽地球系物理学においては、メタデータデータベースの構築やそれを検索することで研究データの情報を簡単に得られるような研究基盤が整えられてきている。その意味で、この分野では、「FAIR原則」の中の「Findability」は一定のレベルに達している。しかしながら、このような研究データの検索は、専門性の高い研究者向けのホームページからのみ利用が可能な状況であり、専門外のより広い研究コミュニティや一般市民に対しては、「Findability」はそれほど高められてはいない。研究境界領域における融合研究や市民科学を促進するためには、メタデータデータベースの被検索性を向上させる必要がある。
また、政策上において、管理対象の研究データへはメタデータを付与した上で、研究データ基盤(NII Research Data Cloud)へ登録することが求められている(参考:「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」)。しかし、このような政策的に期待されるメタデータの共通項目と、研究に必要な詳細なメタデータ項目には大きな違いがある。研究者にとって重要なのは「研究に必要な詳細なメタデータ」であるため、研究用のメタデータを作成するだけで、政策的に必要な共通メタデータをも自動的に作成できるような一元管理の仕組みが理想的である。
本事例では2022年7月から、太陽地球系物理学分野の研究データに用いられるSPASEメタデータスキーマを一般的なJPCOARメタデータスキーマに変換し、それを機関リポジトリに登録する取り組みを行った。これにより、メタデータデータベースの被検索性の向上と研究データマネジメントの一元化が実現できた。JPCOARスキーマを利用した背景・理由:
政策的に期待される共通項目を備えた一般的なメタデータスキーマとして、機関リポジトリで広く使用されているJPCOARスキーマを選定した。
使用したJPCOARスキーマのバージョン
1.0.2(2022年7月時点)
手法
- SPASEの項目数は約2200個であるのに対し、JPCOARスキーマにおいて研究データに対応する項目は約10–20個ほど(例: タイトル、作成者、寄与者、内容記述、日付など)である。JPCOARスキーマの各項目に対し、SPASE側で対応する項目を記載した対応表を作成した。
- 作成した対応表に基づき、メタデータの変換をXSLT(Extensible Stylesheet Language Transformations)で実装した。XSLTはあるスキーマに基づいて記述されたXMLデータを別のスキーマに基づいたXMLデータに変換するための定義が書かれたファイルである。XSLTファイルは、github (https://github.com/iugonet/SPASE-JPCOAR)にて広く公開している。
- 変換を行ったメタデータを名古屋大学および九州大学の機関リポジトリに登録した。
実施結果
名古屋大学および九州大学の機関リポジトリはJAIRO Cloudを利用しているため、政策的に期待される研究データ基盤への登録という要求を満たした。
また、派生効果として、他のリポジトリによるハーベストを通して、被検索可能性が向上した。(例:(a) NAGOYA Repository → (b) 国立情報学研究所学術機関リポジトリデータベース(NII IRDB) → (c) データカタログ横断検索システム → (d) Google Dataset Search)関連資料
Nosé, M., A. Shinbori, Y. Miyoshi, T. Hori, T. Ohira, J. Hashiba, C. Naoe, R. Gakiya, M. Okamoto, T. Sagara, T. Aoki, S. Matsubara, I. Takahashi, H. Hayashi, K. Yamada, Y. Minamiyama, Y. Tanaka, S. Abe, S. UeNo, S. Imajo, Y. Saito, T. Ashikita, Y. Hori, T. Shimizu, N. Okamura, K. Hirano, and L. Bargatze, Enhancing findability and searchability of research data: Metadata conversion and registration in institutional repositories, Data Science Journal, 23, 2024. https://doi.org/10.5334/dsj-2024-040
技術資料
github(XLSTファイル、メタデータ変換表の公開ページ)
https://github.com/iugonet/SPASE-JPCOAR